現在のデジタル主流のカメラ界で、専用ソフトを使用してレタッチ(Raw現像)を行うことはよく行われています。
プロのカメラマンにとってはごく当たり前に行われてきましたが、写真を仕事としていない人の間でも一般的になってきています。
Raw現像の本が書店に多く並ぶ様子を見るとそれが見て取れます。
カメラメーカーの編集ソフトや、知名度No.1であるadobeのLightroomやLightroom Classic、Photoshop、海外を中心にSkylumのLuminar4などが好まれて使われています。
人の手によって写真に手を加えるレタッチという行為。
レタッチすることは良いことなのか、それとも良くないことなのか。
つまりは「正義なのか?邪道なのか?」
このことが議論されることが多いようなので考えていきます。
レタッチは正義?邪道?
結論から言うと、僕はレタッチは正義派。
個人的な意見としては「どんどんレタッチしよう、レタッチ賛成派」です。
レタッチは正義!プロアマ問わず誰もがレタッチをして、自分の写真の幅を広げてってほしいです。
しかしながら反対派も多いのも確か。反対派の意見もよく分かります。
なぜ反対派が多いか考えてみると、
「レタッチで調整や編集した写真はただの加工品で、カメラで撮ったというよりPCで作り上げた作品」
といった意見が多く挙げられるからです。
まさにその通り。PCで作り上げた写真は、いわばただのイラストのようなもので、写真としての価値が減少してしまうという考えもあります。
写真の中のゴミを削るぐらいならまだしも、何でも消したり…元の写真とは全く違うような「別の」写真に作り上げる。
僕の考えとしては、やりすぎだなと思わせるのは良くないと感じます。
本来のレタッチの意味合いから考えると色合いを変更しすぎてこれは写真なのか?と思わせる写真も良いと言えません。
また、あからさまにコントラストを上げすぎたり、光を強めすぎたり、SNSを眺めていると見ていて痛いと思うような写真がたくさん。
こういった間違いのレタッチをしないためにレタッチについてもう少し考えてみたいと思います。
レタッチは何のために?
先ほどやりすぎって言いましたが、それはどこを超えるとやりすぎで、どういった基準があるのでしょうか?
その問いの前に、結局のところレタッチはどういった作業であって何のためにするのか?ということを考えてみます。
僕が考えるレタッチ。それは
・自分の見た光景をカメラの設定で補いきれなかった時に、後からその見たままの(記憶した)光景に近づける作業。
・もしくは、写真をより「魅せる」ために印象的に表現するためのツール。
この2つです。
レタッチする際に撮影した瞬間のことを頭に描きながら、その光景を再現していきます。完全に思い出せなくても想像が入っても良いです。
そこを目指すのが本来の意味のレタッチ。
思い描いた自分の色を目指して仕上げていくわけですから、その色に行き着いたら終了になります。そこがレタッチのゴールです。
問題は芸術的に魅せる作品に仕上げる場合です。
この時にやりすぎ作品が多く生まれてくるのではないかと思います。あれもこれも修正を加えて、どこまでやるのか分からなくなった状態…
やりすぎた作品にしないためには、自分の中で具体的なルールを決めるのがいいでしょう。
例えば、小さなレンズやセンサーのゴミ程度のものなら良いけど、人やものを消すのはナシ。もちろん物を足すのもナシ。
ものを足したり、引いたりするのは完全なフィクション画像になってしまいます。それは、もはや写真ではなく絵画に近いものとなるからナシなどです。
結局は自分の物語を一枚の写真の中に作っていくものなので、正解は自分にしか分からないというのが正しい言い方なのかもしれないです。
そう考えてみるとやりすぎ写真だって自分の中のルールにはまっているからOKかもしれないです。写真は深いもの、好きなように納得するまでやるのが良いでしょう。
人にはよりますが、自分のルールを決めることで、やりすぎな写真や「写真ではない写真」が減るのではないかと思っています。
要は、何のためにレタッチするのかを考え、ただ思うがままにするのでは無く、完成形を頭に描くことが重要。
そうすることによって、作業効率も出来栄えも良くなります。
現像後の出来は撮影での段階決まる
撮影後に何でも調整できるからと撮影をおろそかにするのもいけません。
レタッチで調整できるのは
・色に関する情報
・光の情報
・ノイズの情報
この3つです。光やノイズに関してはある程度の限界があります。
ということは、それ以外のシャッタースピード、構図、ピント、絞りの条件はカメラ本体でしか設定できません。(最近のスマートフォンでは撮った後にピントも変えられるみたいですね)
構図、ピントなどがしっかりした写真は、レタッチによってさらに素晴らしい写真にすることはできますが、それらが良くない写真はどうすることもできません。
あくまでもカメラで撮った写真あっての、レタッチなのです。このことが何より大事です。
レタッチをするから撮影は大雑把で良いのではなく、まずはカメラの撮影条件を第一に考えましょう。
レタッチで表現すべきこと
僕個人的なことをお話すると、FUJIFILMが好きでずっと愛用しています。FUJIFILMが出してくれる色におおよそ満足している、というのが現状です。
jpegでもかなり良い味の色を出してくれるのはFUJIFILMならではなのではないかと思います。
しかしレタッチは常にしていて、僕にとってAdobe Lightroom Classicは必須ツールです。
例えば、空や海の色。カメラ本体で良い色を出してくれていても、それが朝日なのか夕日なのか微妙に記憶色と違う時があります。
そういった微妙な色の違いをレタッチで自分の思い描いた色に近づけられるというのが重要なポイントです。
さらに、逆光で撮った時の写真と実際の見え方の違い。部分的に露出を調整できると目で見た写真に近くなるのかなと感じます。
このように微妙な色の違いをレタッチによって表現していくというのが、レタッチの強みなのです。
これから先、どれほどカメラ自体の設定で良いjpeg画像が作られるとしても、僕はRaw現像ソフトを使うと思います。
何より現像が好きで、楽しい。
「現像してない写真(撮ったまま) = jpeg」ではない
レタッチ反対派の人に伝えたいことがあります。
カメラで撮影して「jpeg撮って出し」で出す時、その写真が何もされない撮ったままの写真と思われるかもしれません。しかしそれは完全なる間違い。
実はカメラの中で調整が行われています。カメラの中ですでに現像されているのです。
つまりはメーカーごとの特徴によって微妙に調整された、Rawデータとは色合いが少し変わった写真ということなのです。
Rawで撮った写真はそのような調整を行わないデータなので、jpeg撮って出しの時にカメラが行っている調整を自分でレタッチとして行います。
つまりメーカー独自の方式でカメラ本体がやるか、それとも自分でやるか。
それがレタッチと撮って出しの違いです。
レタッチは複雑に見えて、こんなに簡単なことなのです。非常に大事なことなので覚えておきましょう。
理解しておくとレタッチに対する疑念や、反対派の気持ちが薄れるかもしれませんよ。レタッチに対する敷居が低く感じられるはずです。
レタッチを始めよう
これまでjpegだけで写真を撮っていた人がいるとすれば、すぐにRaw現像を始めることをおすすめします。
写真の可能性が広がりますし、写真が楽しくなります。
一番有名なAdobeのサービスには2つ。LightroomかLightroom Classicがおすすめです。
LightroomとLightroom Classicの違いはこれ!徹底解説します
始めてしまえばやり方は簡単です。以下の記事で始め方を分かりやすく解説しています。やってみたい方はどうぞ。
表現できる写真の幅が広がることで、カメラが純粋に楽しくなりますよ。
まとめ
最後に本記事で書いたことをまとめておきます。
・レタッチの目的は2つ。「写真を記憶色に近づけること」と、「作品として仕上げること」
・やりすぎな写真にならないようにするために、自分の中でルールを決める
・常に完成形を頭で思い描いてレタッチする
・レタッチで調整できるのは「色」「光」「ノイズ」の情報
・レタッチよりも撮影条件を第一に考える
・撮って出し画像とレタッチ画像の違いは、「カメラが現像したか」「人が現像したか」ということ
さあみなさん、レタッチを始めましょう。写真の幅が広がること間違いなしです。
僕自身、最近はLightroomはメインに、Luminar4も使用しています。AIを搭載した現像のおかげで、Lightroomより効率的にレタッチできる気がします。