モノクロ写真、素敵ですよね。
同じ写真でもカラーとモノクロでは全く違った雰囲気を受けます。僕が大好きな撮影方法です。
アンリカルティエブレッソンも好きだし、森山大道も好き。いずれもモノクロで写真を撮る写真家です。モノクロで撮った写真を見るとじっと見つめてしまいます。いつまでも見てられて、引き込まれそうな雰囲気。
写真が開発された時、写真とはモノクロのみでした。カラーなんて当然ありません。技術が発達してカラーで写真が撮れるようになり、今現在はカラー写真が主流です。しかしながら好んでモノクロ写真を撮る人が多いことから分かるように、モノクロにはカラーには無いような、たくさんの魅力があります。
本記事ではモノクロ独自の魅力を探るとともに、「僕がモノクロを撮りたくなる瞬間」を考えてみて、一般的にモノクロはどのような場面で撮ると活かされるのか、どのように撮ると最適なのか、ということについて考えてみました。
モノクロ写真が好きな方、カラーと並行していろんな表現の写真を撮っていきた方の参考になれば幸いです。
Contents
モノクロ写真の基礎
モノクロとは正確にはモノクロームといい、英語で「monochrome」と書きます。
本来は単色という意味で、白黒ということではありません。例えば、青や赤でも単一の一色で描かれた写真や絵でも、言ってしまえばモノクロなのです。赤のモノクロ、黄色のモノクロ…
しかし、長く使われる中で『モノクロ=白黒写真』のような意味合いで使われるようになってきています。
なぜ良く見えるの?
何気ない風景や物体をモノクロで撮ると、なぜか、色がある見たままの風景とは違ってよく見えることってありませんか?
言葉では表現できなくともなんだか良いようなおしゃれな感じ、というようなふんわりじわっと響く良さ。なんとなくわかりますよね?
このモノクロ特有の良さの要因の一番に挙げられること。
それは色が無い分、見る人の想像力を働かせるということです。
白黒の強弱はあるので大体の雰囲気は分かるものの、白と黒だけで表現されていて肝心の色が無いので、想像をするしかありません。
無意識のうちの色の想像とともに、その写真の中で流れている時間を感じることで、モノクロ写真はなぜかよく見えるのです。この想像があるからこそモノクロは奥が深く、おもしろいのです。
モノクロの良さがあまり分からない人や、あまり触れてみたことが無い人は、時間をかけてじっくり一枚の写真を見てみてください。その写真の中に流れているストーリーを想像しながら。
きっと何か感じるものがあるはずです。
例えばこの写真。
アメリカの女性写真家ヴィヴィアン・マイヤーの作品です。どうでしょうか?
モノクロのフィルム写真なのですが、この写真に流れている時間、人々の表情はよく見えませんが心情を想像してしまいます。
光と影の対比、さらには視線の先にあるもの。
個人的にはすごく良いモノクロ写真だなと思い、良さが十分に伝わる写真に感じます。
撮り方(設定)
では実際に自分でモノクロ写真をカメラで撮りましょう、となった時にどうやって撮ればいいのかを書いていきます。
フィルムカメラならモノクロ用のフィルムを買います。
オススメは、Kodak 白黒フィルム 35mm トライ-X400 36枚
最近のモノクロフィルムは価格がかなり高いですがより本格的にモノクロを撮るならフィルムが良いです。
デジタルのモノクロと比較した時に。フィルムカメラのモノクロの方が粒子感があって、より懐かしいというか、クラシックな雰囲気が出るような気がします。デジタルよりラチチュードが広く、白と黒の表現が豊かというのがフィルムの一番の良さです。
パシャパシャとテンポよくモノクロを撮りたい場合はデジタルでも大丈夫です。
デジタルは、設定でモノクロの設定にするだけです。どのメーカーのカメラもモノクロの設定があります。
撮影する時にモノクロの設定で撮るか、撮った後の現像でモノクロにするか。という疑問もよく耳にしますが、結局はどちらもほとんど同じことです。
ただ撮影する時にモノクロ設定にすると、後からカラー化することはできません。カラーでも残したいようでしたら、後からモノクロに調整するか、モノクロとカラーの2枚の写真を撮っておくといいです。
デジタルのモノクロというのはあまり撮る人がいません。この分野を網羅した本はなかなか無いのでこの本はおすすめです。
デジタルでモノクロを撮る際の心得を学べます。
僕がメインで使っているFUJIFILMに限って言うと、普通のモノクロという設定と、それにフィルターを付けたモード数種類。それに加えて「ACROS」という驚くほどよく撮れるモードがあります。これはフィルム時代からあるACROSというフィルムの画質に近いデジタル写真が撮れる設定です。
ACROSモードが使いたいためにFUJIFILMユーザーになる人がいるほどモノクロ写真界では評判が高く、素晴らしい機能です。
FUJIFILM以外のメーカーも様々なモノクロの設定があるので試してみるといいでしょう。
オススメする撮影条件
次に撮影する際の僕のオススメの設定を紹介します。
まずはホワイトバランス。モノクロだからといって適当に設定してはいけません。AUTOで撮るのではなく、屋外で撮る場合には太陽光、もしくは曇り。屋内ならそれに合わせた蛍光灯の色に設定します。
次はISO感度。僕個人的にはISO感度を上げて高感度で撮影しても、モノクロは粒状感のある味のある写真になるので、モノクロに限って言うならば、ISO感度は暗いところでは躊躇せずに上げるべきだと思っています。
フィルムに関しては400とかそれ以上でも良いです。
また、普段より露出を1.2段階下げて撮ります。
明るい白という色より、薄暗いグレーだとか、黒という色の方が幅があり、それがモノクロの魅力なので、カラーで撮る時よりやや暗めぐらいにしましょう。
写真全般に言えることなのですが構図はかなり重要、モノクロでは色の情報が無い分さらに重要度が増すと思っています。
主題が際立つような構図を意識するのがモノクロでは大切です。
ある程度よく撮れた写真も、撮影後の現像でさらによくなることも多いはずです。
日常的に使用している「Lightroom Classic」ではシャドウとハイライト、つまり白と黒のバランスを意識して現像します。
僕はこんな時にモノクロで撮る
以前の記事で、モノクロが撮りたくなる瞬間があるという話をしました。
以前の記事の最後に言った通り、モノクロが撮りたくなる瞬間がどういう時でどのような物を見た時なのか。その状況がどういった点で良い写真になり得るかを、考えてまとめてみました。
形に印象を受けた時
モノクロは色の情報がありません。その分、物の形や構造などの作りに目が行きます。
色に印象を受けて写真を撮りたくなった場合はカラーで撮りますし、形に印象を受けた時は迷わずモノクロを選んでいるような気がします。
人を中心に写す時
これも色が無い分、主題をはっきりさせることができます。
表情にも注目させられて、どういった人なの?とか、何を考えているの?と考え、人に焦点を当ててインパクトのある写真になります。
光と影
一番明るい光は白で表され、一番暗い影は黒で表されます。その光と影にもたくさんの白と黒があり、階調が幅広く使われる画になります。
メリハリのある光と影の場面を見た時は、モノクロで撮りたくなる瞬間の一つです。
より味わいのある雰囲気にしたい時
クラシックにかつ、クールに撮ることができるのがモノクロ写真なので、意図してそのように写したい時は使用します。
例えば、歴史ある場所、建物。あとは独特の空気感のある場所です。
個人的に好きなのは、台湾で撮るモノクロ写真です。
日本と少し違った味わいのある写真、なんだかクラシックな雰囲気のある写真に仕上がります。
薄暗い場所
白と黒だけですが、黒にもたくさんの黒があるので、薄暗い場所ではその黒がいかされた写真として撮れます。やや露出を下げ気味で、薄暗さを最大限に味わえる写真を撮ります。
何気ない一瞬
祭りの男たちが集まっている時や、海で釣りを楽しんでいる女性など。カラーで撮るとなんでもない日常写真も、モノクロだと見る人の想像に働きかける良い写真になります。
廃墟
廃れて、今や廃墟となってしまった建物が立っている様子を悲しげに表現できます。ノスタルジックとでも言うべきでしょうか。
実際の作例
モノクロ好きで、よく撮影する僕が撮影した写真です。
先ほど話したように、撮る場面に分けて見てみます。形に注目したり、ストーリーを想像しながら見てみてください。
形、構造
人
光と影
雰囲気
薄暗い場所
何気ない瞬間
廃墟
スナップ写真に
何気ない日常の一瞬を撮ると、見る人の想像に働きかけて良いと言いました。つまりスナップ写真にモノクロはぴったりです。
モノクロ×スナップ写真は何も特別な物や、被写体が無くても撮れます。モノクロ写真を撮りたいと思った方はまずはスナップからモノクロに入ってみましょう。先ほど紹介したヴィヴィアン・マイヤーもスナップの写真家でした。
スナップ写真をモノクロで撮るということは写真本来の楽しみ方なのではないでしょうか。
モノクロにオススメのカメラ
基本的にどのデジタルカメラも設定でモノクロにすることができます。しかしメーカーによってモノクロの味わりが全然異なります。
個人的にはずっとFUJIFILMユーザーで、何種類もあるFUJIFILMのモノクロに一番慣れているし、描写も好きです。
FUJIFILMのモノクロモード「ACROS」は本当に素晴らしい機能です。通常のモノクロよりもより豊かな描写、引き締まった黒色が特徴のモノクロモードです。
これを使えるカメラはX-Pro2以降の機種です。
デジタルでモノクロを撮るなら FUJIFILM は本当にオススメです。
またモノクロ日常スナップを撮影するにはコンパクトのカメラがベストですね。
例えばFJIFILMでいうならX100V。
通常のミラーレスと同等の画質で撮れるコンパクト機種というコンセプトで、おすすめカメラです。
他にはRICOH GR III
GRには「ハイコントラスト白黒」というエフェクトがあり、それがモノクロ写真をアートな作品に仕上げてくれます。
ACROS同様にユーザーからの評判が高く、一度は使用してほしい機能です。
持ち運びできて芸術的なモノクロが撮れれば、完璧なカメラです。
最後に
モノクロの基礎から、魅力、作例まで多くのことをお話しました。少し理解が深まりましたか?
モノクロは古い歴史と原理ゆえに単純そうに見えて、本当に奥が深い撮影方法です。だからこそ、未だに廃れることなく多くの愛好者がいます。カラーのように綺麗だからと理由だけで撮影するのではなく、形をしっかり見て、光を見極めて撮影するので感性が豊かになります。
僕もモノクロに出会って、ものの見え方や世界観が変わった気がしています。
さらに、構図、ピント位置に意識をせざるをえないので、撮影に関してもレベルアップできること間違いなしです。
言語化するのは多少難しかったのですが、自分でもいろいろモノクロ写真について考えてみて、自分の漠然とあった概念のようなものがはっきりしてよかったなと思っています。
モノクロの良さというのはこの他にもたくさんあり、それは自分自身で撮影することによって発見していってください。僕が言ったいくつかの場面に出くわした時には迷わずモノクロですよ。
少しでも多くの方が、モノクロ撮影とカラー写真の併用によって写真の幅を広げてほしいと思っています。
おすすめのモノクロ写真の本